会 告 | 建築仕上材料・デザイン競技2013審査員会 |
建築仕上材料技術・デザイン競技2013
新しい建築空間を実現する建築仕上材料とその技術提案
“新しいタイル空間” 結果 |
第2回目となる「建築仕上材料技術・デザイン競技2013」はテーマを「新しい建築空間を実現する建築仕上材料とその技術提案“新しいタイル空間”」として開催されました。
本デザイン競技は本年5月に募集開始、10月11日に締切りの後、大会学術講演会の2013年10月17日、18日に同会場で作品のパネル展示を行い一般からの投票を受け付けました。その大会参加者による投票を加味した審査委員会を10月21日に開催し、討議、審査の結果各賞が決定いたしましたので発表致します。
2013年11月 建築仕上材料・デザイン競技2013審査員会 |
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1. 募集要件 |
・提出時期:10 月11 日(金)必着
・提出要件:A1 用紙1 枚+記入済応募用紙を同封して提出し、新しい建築空間を実現する建築仕上材料の技術やアイデア、出来上がりの空間デザインを含む内容をわかりやすくプレゼンする。
・提出はA1用紙1枚でよいが、入選者には後日PDF にてデータの提出を依頼する。
・賞金(商品券)最優秀賞 8万円×1 名、優秀賞2 万円×2 名、佳作 図書券5,000 円×最大7 名とする。また、全受賞者には日本建築仕上学会会員(1 年間)および賞状が与えられ、日本建築仕上学会雑誌「FINEX」に受賞者コメント、審査委員寸評とともに掲載される。
・アイデアに関する権利や管理は本人に帰属する。本会主催者側は一切関与しない。すべての提出作品は返却しない。 |
2. 審査委員 |
審査委員長:安達 和男(Adachi Archi Associate 代表)
橘高義典(首都大学東京教授)、小山明男(明治大学教授)、
田村雅紀(工学院大学准教授)、永井香織(日本大学准教授)、
北垣亮馬(東京大学講師)、栗秋祐次(LIXIL)、
八田泰志(セメダイン)、難波三男(ニチハ) |
3. 応募結果及び審査結果 |
・応募数:7 作品
・審査方法:10 月17 日、18 日に東京大学(本郷)山上会館で開催された日本建築仕上学会大会学術講演会にて、提出者のパネル展示を行い、大会参加者の投票結果を加味して10 月21 日開催の審査委員会で選考を行った。
・審査委員会による審査の結果、一般投票と審査委員投票を加味し討議、審査した結果、最優秀賞、優秀賞を選出し、その他応募2作品を佳作とした。
・審査結果 |
審査結果 |
No |
作品タイトル |
作品DL |
○代表者、制作参加者 |
最優秀賞 |
3 |
シラスの自然人造石 |
→DL pdf |
○鈴木亜生、上中誠 |
優秀賞 |
2
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集露塔 シュフロトフ |
→DL pdf |
○栗原拓央、大岩恵、秋澤智子 |
優秀賞 |
4 |
技能の賦活・誇りのある仕事 |
→DL pdf |
○小野幸彌、大岩優美 |
佳作 |
5 |
汚れに着目した動物タイル
(アニマルタイル) |
→DL jpg |
○山本拓弥、小安健太 |
佳作 |
6 |
ヒカルタイル |
→DL jpg |
○荒木優也、小玉たかふみ |
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建築仕上材料技術・デザイン競技2013「新しいタイル空間」講評 |
2013 年10 月 審査委員長 安達和男 |
1.本競技について |
建築空間の表面にあり、建築物の耐久性や意匠性を大きく左右する建築仕上材料は、これまでも様々なニーズに応じて革新的な進歩をとげてきた。本競技は、今後の建築空間の発展と進化を見据え、より革新的で技術的にも意匠的にも興味深い建築仕上材料のデザイン・技術を提案する作品を広く募集し、建築仕上材料の新しい価値を切り開く可能性を評価する競技である。なお本競技は、次世代活性化の目的で日本建築仕上学会基金の支援を得て行われた。本競技は今後数年の継続を考えており、より多くの応募を期待したい。 |
2.講評 |
今回はテーマを設定した競技の初年度であり、応募作品数は7 作品にとどまった。しかし応募者は実務者から学生まで、応募内容は実際に建てられた建物からアイデア提案までと広い幅をもち、興味深い作品が寄せられた。
最優秀賞の「シラスの自然人造石」(鈴木亜生、他)は、鹿児島の地域性に根差した地下資源のシラスにより形成されたシラスブロック・タイルの建築実作である。地球環境配慮の地産地消を踏まえ、室内環境にも配慮した材料開発と意匠デザインが良く調和し、本競技の主旨に優れて合致している。シラスタイルは比較的、吸収性が高い。これが室内の湿度調節に有効な一方、外壁では汚れを吸着する可能性がある。その汚れがエイジングとして建物に風格をもたらすのかどうか、今後の経年変化に注目したい。
優秀賞の「集露塔 シュフロトフ」(栗原拓央、他)はアフリカの砂漠地帯において、新たな開発タイルで造られた集露塔が朝露を集め、貯水した地下から灌水し緑化を行う提案である。地球環境を配慮したユニークかつ詩的な提案が、精緻なプレゼンテーションで魅力を放っている。タイルで集めた朝露を毛細管現象で塔の内部に集めるという仕組みが、タイル自身の持つ吸水性とどう両立するかが、この提案の鍵である。この点の今後の研究開発に期待したい。
優秀賞の「技能の賦活・誇りある仕事」(小野幸彌、他)は湿式工法を支える左官技術者に関する問題に注目し、調査、分析、提案を行った地道な作品である。デザインだけでなく材料技術への提案を求めた本競技の主旨によく合致する。今後、提案内容の深化に期待したい。
佳作の「汚れに着目した動物タイル(アニマルタイル)」(山本拓弥、他)は、汚れの拡散を狙った新たなパターンの提案である。使用例を動物園で上げているが、動物がアニマル柄に困惑する恐れがあるので、むしろ商業ビルにふさわしいと思える。佳作の「ヒカルタイル」(荒木優也、他)は、実現性の高い提案である。LED の電源として、太陽光などの自然エネルギーなどとの組合せに期待したい。
選外となった「ぬくもり」(鈴木春菜、他)は温かいタイルの提案である。「紙タイル」(清水将通)は、紙で作るタイルという提案である。両者ともタイルの既成概念にとらわれない独自性があり、今後も興味を持続し実現につなげてほしい提案である。
以上 |
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受賞者コメント |
◇最優秀賞 シラスの自然人造石 |
・代表者 鈴木亜生(ARAY Architecture)
この度は、最優秀賞を賜り、大変光栄に感じております。この場をお借りして、選考委員会の皆様、本プロジェクトに携わった皆様に御礼申し上げます。
今回、開発したシラスブロック・タイルは、個人住宅に限らず、広く公共に貢献できる材料です。今回の受賞を励みに、引き続きブロックの開発・構法を研究し、新しい空間づくりに取り組んでいきたいと考えています。
今後とも,皆様のご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。 |
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◇優秀賞 集露塔 シュフロトフ |
・代表者 栗原拓央(東鉄工業(株)建築本部建築設計エンジニアリング部)
本デザイン競技におきまして優秀賞をいただき大変光栄に思います。この作品は現在進行中である地球規模での砂漠化に対して、新しく開発するタイルを用いた環境浄化装置としての『砂漠緑化・集露灌水システム』の提案です。タイルというありふれた材料に新しい機能を付与し、地球環境を緑に戻す役割を持たせました。この集露塔群が最後には役割を終え、たくさんの緑に囲まれ埋没してしまうような風景を想像していただければ幸いです。
本提案の実現に向けて協力頂ける企業、研究者の方がいらっしゃいましたら是非とも御一報お願いいたします。 |
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◇優秀賞 技能の賦活・誇りのある仕事 |
・代表者 小野幸彌(工学院大学)
このたびは建築仕上材料技術・デザイン競技2013 にて優秀賞を頂き、誠にありがとうございます。今日では建築に際して意匠の要求事項が高くなっており、建築コスト、工事期間など様々な制約を大きく受けているように感じます。タイルは施工時に熟練のマイスター(職人)を必要とする為、施工難度は高いですが、風合いや物心両面の心など様々なものをもたらしてくれると思います。今後ともタイル施工等における研究活動において新たなタイルの可能性を提案していけたらと思います。 |
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→pdf版資料DL FINEX
2013.11-12 |